白衣性高血圧症

 
報告者:西埜 義則(にしのカイロプラクティック院

 

【患者様】 70代 女性 
【主訴】 白衣高血圧
【その他症状】 時々肩こり
【施術内容】 当院の開業以来、カイロプラクティックで「健康管理のお手伝い」をさせていただいている患者様から、血圧についてのご相談がありました。
術 者 「今日の体調はいかがでしょうか?」
患者様 「先日、定期検診で血圧が高いといわれました。」
術 者 「今までは正常範囲でしたね。」
患者様 「自宅では正常なんですけど、病院で計ると高いんです。」
この患者さまの平常時の血圧は、110-70mm/hgと決して高いものでもなく、どちらかといえば低い血圧です。病院では160-90mm/hgと、高めの血圧だったそうです。

  「自宅でその血圧でしたら、白衣高血圧ですね。降圧剤を飲むほどでもないので、しばらく様子をみましょう。」と、病院の先生のお話し。1ヶ月前の受診でも、同様の診断だったそうです。
このように自宅では正常血圧なのに、病院では血圧が上がるような症状を、現代医学では「白衣高血圧」と呼んでいます。

白衣高血圧の原因として、診察の時の「緊張」が考えられます。静かなところで、落ち着いてから、血圧を測りなおすと、ほとんどの人が150以下に下がることが多いようです。
診察の時にだけ高血圧の人に聞いてみると、「診察時に緊張するほうである」と答える人が大部分という調査結果があります。しかし診察の時以外では、緊張しないようです。つまり「白衣高血圧」は、診察時にだけ緊張することによって起きる高血圧と思われます。

術 者 「開業以来、私も白衣ですけど、当院では低い血圧ですよね。」
患者様 「そうですねぇ。」
術 者 「何が血圧をあげているのか、原因を探してみましょうか?」
患者様 「お願いします。」
と、いうことで、心身条件反射療法の神経反射を用いた筋力抵抗検査をおこなって、「ソフト(こころ)面」が原因になって、血圧を上げているかを調べてました。
術 者 「病院で血圧を測った時のことを思い出して下さい。」
患者様 「ハイ。」

患者様に血圧測定時の様子をイメージしていただきながら、神経反射による筋力抵抗検査をおこなうと、全く抵抗できず顕著な陽性反応を示しました。これは病院での血圧測定時に、何らかの感情によって「脳・神経系の緊張状態」がつくられたことを意味します。
次に、心身条件反射療法のプロトコルに則って、「どういったことが、血圧を上げる原因になっているのか?」を調べていきました。
心身条件反射療法の「緊張パターン」絞り込みチャートを用いて、言語神経反射検査をおこなうと、「五感→聴覚→声→他人の声」と、反応を示しました。

術 者 「血圧は看護師さんが計られましたか?」
患者様 「いいえ。ドクターに計っていただきました。」
術 者 「では、ドクターの声を思い出して下さい。」
そして、神経反射による筋力抵抗検査をおこなうと、陽性反応があらわれました。どうやら、ドクターの声が「緊張パターン」になっているようです。
術 者 「ドクターは何か話されましたか?」
患者様 「私に年齢を尋ねて、お若いですねと言ったんです。」
術 者 「そうですかぁ。僕もそう思いますよ(笑)」
患者様 「実は、私、若く見られるのが嫌なんです。」
術 者 「えっ、そ、そうなんですか?(汗)」
患者様 「それだけ軽く見られているってことでしょ(怒)」
ドクターから「お若いですね。」と言われたときのことを思い出していただきながら、神経反射による筋力抵抗検査をおこなうと、顕著な反応が見られました。これを「緊張パターン」と、呼びます。
術 者 「ドクターは、どうしてそんなことをおっしゃったのでしょうね。」
患者様 「おべっかのつもりなんでしょうね(怒)」
術 者 「僕も含めてですけど、男性は女性から喜ばれたいですからねぇ。」
患者様 「・・・」
術 者 「では、ドクターの言葉をどのように捉えることでホッとできますか?」
患者様 「男って生き物は、単純でバカってことですね(笑)」

それをイメージしていただきながら、神経反射による筋力抵抗検査をおこなうと、しっかり抵抗することができました。これが、この患者様にとっての「リラックス・パターン」です。
この患者さまの「緊張パターン」であるドクターからの「お若いですねぇ。」と、いう言葉による情報を、「リラックス・パターン」である「男という生き物は・・・」と、いうような捉え方に変化させることで、新しい思考パターンに切り替わるように調整をおこないました。
確認のための再検査で、ドクターからの言葉を大げさにイメージしていただいて、神経反射による筋力抵抗検査をおこないました。すると、施術前には抵抗できなかった筋力抵抗検査でしたが、神経バランスは保たれて、しっかりと保持することができました。
これで、ストレスに感じていたドクターからの言葉を、ストレスに感じないように調整できたことが確認されましたので、心身条件反射療法の施術を終えました。

【施術結果】 1週間後、次回の予約のお電話をいただきました。当院で治療を受けた3日後、ドクターの診察を受けた時の血圧は、いつもと同じ110-70mm/hgだったそうです。
「あのときは疲れがでていたのでしょうね。」と、ドクターがおっしゃったんです。と、笑いながら報告をいただきました。

【考察】 後日わかったことですが、患者様とドクターは20年来の友人という間柄でした。思ったことを何でも話すことができるにも関わらず、ドクターからのちょっとした言葉遣いで、相手を傷つけてしまったようです。
女性に「お若いですねぇ。」と、いう言葉は、「褒め言葉」だと思っていましたが、言葉を受け取る側によっては、「怒り」の感情を芽生えさせてしまうこともあるという、とても良い経験をさせていただきました。
「白衣高血圧」は、患者さまの緊張によって起こると言われていますが、緊張の原因を紐解いていくと、ドクターの言葉や声のトーン、そして、患者様へ接する態度で、患者様の心が傷付けられたために起こった医原病かもしれません。