子供を亡くした母の不定愁訴

 
症例テーマ:
●子供を亡くした母の不定愁訴
 
報告者情報:
氏名:石田尚也
●臨床歴(開業歴):23年 開業歴13年
PCRT歴:4年半 プラチナ認定
施術院名:千葉県市原市 ひより整骨・整体院
報告期日・2023年7月10日(月)
 
症例テーマ:
・患者の訴える不定愁訴が多く、複雑多岐にわたるため、いかに症状のメジャーを捉え、効率的に治療が行えるかがポイントとなった。
 
はじめに:
・本症例は、2年前の症例で症例報告をするにあたっては治療技術も拙く、スムーズに行えたとは言えないが、たくさんの不定愁訴を抱えた症状のきっかけが子供の死であり、そこから改善に至り人生に前向きになられた患者さんで、PCRTを学んだ私にとってとても印象深い症例であったのでこの症例を報告させていただく。
 
症例要約:
・完治(大筋としては完治)
・治療期間:2021年10月27日〜2023年1月18日
・通院回数:16回 コーチング8回
・一回の治療時間:40分
・治療経過の良し悪し:良好
・治療経過の要約:波はあったが、順調に改善
 
患者の愁訴:
・肩こり、頭痛、腰痛、骨盤の開き、痩せにくい、姿勢が悪いなど
 
患者情報:
・年齢:36歳
・性別:女性
・職業:主婦
・患者の特徴:来院時は暗い印象
・発症時期:9年前から
 
発症からの経緯:
・既婚、夫1年前に脳梗塞により高機能障害、現在は回復
・9歳(長女)、3歳(次男)、1歳(三男)
・長男、5年前に白血病を発症。3年前完治直前に事故で亡くす。当時7歳
・症状のチェック項目には、首の症状、肩の症状、背中の症状、腰の症状、足指の症状、慢性疲労、交通事故の後遺症、寝不足、不眠、骨盤の歪み、姿勢が悪い、生理不順、全身の蕁麻疹など
・9年前に脳脊髄液減少症と診断された時からいつも不調
・特に天気が悪い時には調子が悪くなる。
 
治療回数毎のスケール表
 

  初回 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目 8回目 9回目 10回目
症状の程度:0〜10 10 10 4 3 6 5 6 3 2
症状に対する
予期不安:0〜10
10 10 3 2 4 4 5 3 1
CGI-I:1〜7
(改善の程度)
  7 2 3 4 4 5 3 1
CGI-S:1〜7(初診時の重症度) 7 ←初回時のみ入力

 

 
初回〜通院施術回数毎の記録
 
初回:2021年10月27日
 
・問診での段階で直感的にメンタル系の関与を予測し、説明する。
・PCRTの口頭説明を行い、書面での予習案内をし、次回治療移行。
・初回は基本バランス調整のための、AMと骨格矯正を行う。
 

 
2回目:1週間後 2021年11月4日
 
・AMにて基本バランス調整
・PCRT基本バランス調整
・患者の不定愁訴が多くの場所に出ていたため症状のイメージをしてもらいメジャー検査
 
●目安検査
 

  陽性 陰性
症状イメージ:腰椎骨系、右肩部骨系、頸椎骨系  
ブレインマップ:右前頭前野部音叉刺激  

 
●EB検査
 
身体系&情報系EB 陽性 陰性
ブレインマップ:右前頭前野部音叉刺激  

 
● 調整法:辺縁系
 
身体系&情報系EB 言語チャート  反応言語 内容 調整後
右前頭前野部音叉刺激 信念1 自立心 仕事をしたいが経済的に困っていない。亡くなった子供のことを考えて複雑な気持ちでいる。 陰性化
同上 信念2  自省心 白血病の息子に面会をするための自分の行動に対して。白血病の原因は自分のせいではないか? 陰性化

 
●目安検査再評価:
 
  陽性 陰性
症状イメージ:腰椎骨系、右肩部骨系、頸椎骨系    
ブレインマップ:右前頭前野部音叉刺激    

 

 
3回目:1週間後 2021年11月11日
 
患者コメント(愁訴)
生理不順が治った!夜中ミルクで起きてから、そのまま洗濯したり家事が色々できた。
・朝、比較的スッキリ起きられる様になった。
・蕁麻疹が今日まで出なかった。
NRS10→4
 
症状の数値化:
 

症状の程度 4/10
予期不安 3/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 2/7

 
・AMにて基本バランス調整
・PCRT、基本バランス検査
・患者に症状のイメージをしてもらいメジャー検査
 
●目安検査
 
  陽性 陰性
症状イメージ:頸椎靭帯系  
ブレインマップ:右上顎部音叉刺激  

 
●EB検査
 
身体系&情報系EB 陽性 陰性
ブレインマップ右上顎部音叉刺激  

 
調整法:辺縁系
 
身体系&情報系EB 言語チャート  反応言語 内容 調整後
右上顎部 信念1 警戒心 子供全員に対する事故や怪我に対して。事故の出来事以降、常に警戒している状態。 陰性化
同上 信念2  羞恥心 子供の事で実母に当たってしまう。母に優しい言葉がけができない自分に対しての羞恥心。 陰性化

 
●目安検査再評価
 
  陽性 陰性
症状イメージ:頸椎靭帯系    ○
ブレインマップ:右上顎部音叉刺激    ○

 

 
4回目:11日後 2021年11月22日
 
術者所見
・患者の表情や目の輝き具合、力強さを感じられた。
 
症状の数値化:
 

症状の程度 3/10
予期不安 2/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 3/7

 
・AMにて基本バランス調整
・PCRT、基本バランス検査
・患者に症状のイメージをしてもらいメジャー検査
 
●目安検査
 
  陽性 陰性
症状イメージ:腰椎骨系、頸椎骨系  
ブレインマップ:右前頭前野部  

 
●EB検査
 
身体系&情報系EB 陽性 陰性
ブレインマップ右前頭前野部音叉刺激  

 
調整法:辺縁系
 
身体系&情報系EB 言語チャート  反応言語 内容 調整後
右前頭前野部 信念1 虚栄心 お父さんに対する強がり。どうにかしてあげたい。理想と現実の違い。自分ではどうにもできないことに対する気持ち。 陰性化
同上 価値観 団結心 自分の理想とする家族とのつながりが現実と違う。4/10 陰性化

 
●目安検査再評価
 
  陽性 陰性
症状イメージ:腰椎骨系、頸椎骨系    ○
ブレインマップ:右前頭前野部    ○

 

 
5回目:6日後 2021年11月27日
 
患者コメント(愁訴)
・長女のバスケキッズ戦で疲れ果てる。以降12月3日まで回復せず。
・完全にエネルギー切れ
・蕁麻疹継続、冷え性は改善
 

 
6回目:1週間後 2021年12月3日
 
症状の数値化:
 

症状の程度 6/10
予期不安 6/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 4/7

 
・AMにて基本バランス調整
・PCRT、基本バランス検査
・患者に症状のイメージをしてもらいメジャー検査
 
調整法:辺縁系
 
身体系&情報系EB 言語チャート  反応言語 内容 調整後
  信念1 探求心 内職をしているが本当にやりたい事ではない。現状できることとやらなくてはいけないこと、今後の心配 陰性化
  信念2 自省心 母として子供との関わりについての反省 陰性化

 
調整法:皮質系
 
エピソード記憶EB内容  調整前 調整  調整後
陽性 陰性 陽性 陰性
疲れによって頭や体が痛くなるイメージ
    体調がいい自分のイメージ
+カラー調整で上書き
 

 

 
7回目:10日後 2021年12月14日
 
患者コメント(愁訴)
・長女の反抗に対してメンタル低下
 
症状の数値化:
 

症状の程度 5/10
予期不安 4/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 4/7

 
調整法:辺縁系
 
身体系&情報系EB 言語チャート  反応言語 内容 調整後
  信念2 羞恥心 長女のだらしなさにイライラしてしまう。夫に対して母親としての羞恥心。 陰性化

 

 
8回目:10日後 2021年12月23日
 
患者コメント(愁訴)
・生理痛が酷かった。体がだるい。眠い。
 
症状の数値化:
 

症状の程度 6/10
予期不安 5/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 5/7

 
調整法:辺縁系
 
身体系&情報系EB 言語チャート  反応言語 内容 調整後
  価値観 特別感 夫に対して、妻としての特別感4/10 陰性化
  信念1 猜疑心 ママ友で言動と行動が伴わない人がいる。信用できない。 陰性化

 

 
9回目:2週間後 2022年1月11日
 
患者コメント(愁訴)
・前回までは予約日前に不調が長く続いたが、今回は頭痛や右膝の神経痛?や首肩の痛みがありつつも長くは続かなかった。
 
症状の数値化:
 

症状の程度 3/10
予期不安 3/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 3/7

 
調整法:辺縁系
 
身体系&情報系EB 言語チャート  反応言語 内容 調整後
  信念1 警戒心 旦那さんに転勤があること。単身赴任するかどうか。 陰性化
  信念2 競争心 長女のバスケ仲間の親に対するストレス。 陰性化

 

 
10回目:2週間後 2022年1月26日
 
患者コメント(愁訴)
・1月25日に蕁麻疹。生理痛はほぼなし。
・PCRTに対する興味。なぜ治るのか?自分にもできるのか?
 
症状の数値化:
 

症状の程度 2/10
予期不安 1/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 1/7

 
調整法:辺縁系
 
身体系&情報系EB 言語チャート  反応言語 内容 調整後
  価値観 連帯感 旦那さんとの連帯感 陰性化

 
*その後10日から2週間のペースで来院し、症状の改善に至る。
*蕁麻疹はストレスを感じた時に、部分的に出現するが、短期間で改善。
*5月11日まで計17回のPCRTを行い、その後、目標達成のためのコーチングセッションを8回行う。
 

 
考察
本症例では子供の死という好転し得ない過去の経験が原因で起こる不調に対して、その事柄に対して患者自身の意味づけが大切だということがテーマとなる治療であったと思う。

患者から拾える無意識のキーワードは子供の死に対してのラインに沿ってという印象ではなく、それを中心に広がるように様々なキーワードが絡み合っているように感じた。
PCRTでは物事の捉え方や関係性は千差万別で術者の主観は排除し、患者主体でキーワードを拾っていくことの大切さをこの症例で改めて実感した。
私自身、子供の死と向き合う母親に対してできるだけ主観を入れず、患者がオープンにしていくキーワード、深み、タイミングなどを焦らずに引き出していくように心掛けた。

この症例に対し、改めて振り返ると治療経過は決して順調ではなかったと思うし、反省点は非常にあると感じた。
症状が大きく改善するには期間や回数としてはかなりかかってしまったと思う。この症例報告を書くにあたり、患者の同意と覚えている治療内容の協力を得たところ、かなり細かく記録を残していたことが結果的に患者自身の改善の助けになったのではないかと考えられた。

一般的な治療では単純に身体症状部位の治療を行なったり、薬を処方することでしかアプローチする事ができないが、PCRTでは過去のトラウマやそれに伴って起こる脳の誤作動記憶による不調を調整する事で、今回の症例のような心の傷が原因で起こる不調に対して、患者自身がその事柄に対しての意味づけを変化させる事で、身体的な不調を改善させることができる素晴らしい治療法であると再認識することができた。