投球イップス、送球イップス

 
報告者:篠﨑 大輔(バースデーカイロプラクティック

2018.8.30

【患者】 16歳高校生
野球イップス:投球イップス、送球イップス

小学校から野球を始めお父さんの指導のもと成長、中学ではエースピッチャーとして活躍してきた、高校に入り父親の指導から高校の監督、コーチの指導に変わった。バッティングピッチャーをL字ネットの後ろからやっている頃から投げ方がわからなくなってきたとのこと。その時は、ストライクに入れなきゃという思いだったとのこと。
来院時は、ピッチャーからファーストの練習に切り替えているがイップスが治ってピッチャーとして活躍したいと希望して来院。
【症状】 ピッチャーマウンドから投げると指に引っ掛かりが感じられずコントロールがつかない。腕を引いた時に止まってしまう。弱い球になる。
30m以上(塁間以上)になると指に引っ掛かりを感じられず弱い球になってしまう。
塁間は投げられるけれど、弱い球になる。

【施術】 1回目
目安検査:右大腿筋膜張筋、右上肢挙上、頚部右回旋、イップスイメージ
ハード面
アクティベータメソッドで神経系の調整
ソフト面
五感:身体感覚:姿勢が反応:投球フォームで足を上げた時で反応、調整。
価値観:安心安定で反応。野球関係。相手が取りやすく次に投げ安い所に投げられること。意識の満足度3→無意識の満足度0
信念:競争心:ミスしてはいけないという自分の理想との競争→さらにで反応→ミスとは?と質問:相手が構えた所に投げなければならない→さらに:その時の自分はどう見えますかと質問:止まっている自分がいる。→さらに、何が聴こえますか?と質問:しっかり投げなきゃと言う自分の内的声→さらに、何かを感じますか?と質問:何も感じない。
トータルイメージで反応。
今までで最高のピッチングを質問:中学3年生の大会
その時をイメージすると何が見えますか?:難なく投げている自分
何が聴こえますか?周囲からの背中を押す声援
何を感じますか?ボールが手に引っかかる感触
競争心からの誤作動イメージと過去の陰性イメージで交互に調整。


2回目(4日後)
経過:次の日にファーストでノック練習を受けていた時に、セカンド、ホームへの送球がスムーズに投げることができた。
自分の中では、それでもまだ思い通りには投げられていないという感覚。
ハード面
AMにて神経系調整
ソフト面
感情:希望が反応:エースで甲子園で投げるが反応、調整をおこなった。
次に、信念:警戒心が反応:相手の取りやすいところに投げることへの警戒心→さらに、投げられないとどうなる?:打たれる→さらにで反応:打たれるとどうなる?:点数を取られるに反応、調整をおこなった。
次に、感情:劣等で反応:1年生大会で自分はベンチで同級生エースの投げているところをみていることへの劣等が反応、調整をおこなった。


3回目(11日後)
経過:40mくらい離れてキャッチボールすると指に引っかかりが感じられず投げられないとのこと。
目安:症状イメージ
ハード面
AM
ソフト面
五感:視覚:コーチにみられているで反応:さらに、感情:意欲:腕を振って投げるで反応、視覚と意欲の組み合わせで調整。
次に、視覚:場面で反応:練習試合で上手くいかなかった時で反応、調整。
次に、信念:羞恥心で反応:思い通りになげられないのに表向きは笑っている自分がいるが、内側には笑えていない自分がいるで反応、調整。
次に、信念:警戒心が反応:チームに迷惑をかける警戒心:さらに:点数が取られることへの警戒で反応、調整。


4回目(1日後)
経過:塁間くらいのキャッチボールは投げられる。セットアップするとボールの引っかかりがわからず、すっぽ抜けたりする。
ソフト面
五感:視覚:場面で反応:去年5月バッティングピッチャーをしたときで反応、調整。
次に:五感:身体感覚:姿勢で反応:ピッチングの動作で足を上げる時が反応、調整。
次に、エピソード記憶で反応:
不良状態イメージ:L字ネットでバッティングピッチャーやっていて腕を振れていないイメージ。
良好状態イメージ:肘を伸ばして振っているイメージ
交互に調整。


5回目(1週間後)
経過:ワインドアップ、セットポジションからはまだ指がひっかからないで、腕が落ちる感じがするとのこと。
ソフト面
五感:聴覚:他人の声で反応:スロー100%とコーチに言われているで反応、調整。
他に、キャッチャーの構えたところに投げろとコーチの声で反応、調整。
次に、五感:身体感覚:姿勢:ワインドアップで反応、調整。
他に、足上げ、さらに:ひねらなければならないで反応、組み合わせ調整。
他に、足ついて投げる姿勢、さらに:腕を振らなければならないで反応、組み合わせ調整。
投げ終わり+真っ直ぐにならなければならない
⇔切り替えイメージ:上記ルールを横に置いてなげている→楽しく投げている


6回目(5日後)
経過:強い球が投げられない
ハード面調整
AM
ソフト面調整
上級感情:不信:野球で反応:コントロールが悪い自分のスローが信じられない。→その背景:100%でスローするというテーマがあるからで反応、調整
100%スローが誤作動につながってるようですが何か変化させますか?
→60%くらいでやってみる。
次に、信念:利己心で反応:バッティングピッチャーをやらないで避けている自分で反応、調整。
次に、信念:忠誠心で反応:監督、コーチの言うことは聞くで反応、100%スローもそうだとのこと。調整。


7回目(10日後)
経過:強く投げられるようになってきたけどまだ完璧ではない。ランナーいると送球が乱れる
ピッチャーはやっていないのでわからない。
目安:練習でファースト守備で1塁ランナーいる状況でセカンドに送球する時に乱れるイメージ
ソフト面調整
信念:信仰心が反応:アウトにしなければならない→その背景:試合の雰囲気が崩れる→負ける→周りが悪かったところを言い合う→それを聞いている自分で反応、調整
信念:自省心で反応:悪いところを考える癖、良かった時も悪いところを考えているで反応、調整。
中学時代までは親が悪いところを指摘してくれていたけど、高校になって親から離れて自分で考えるようになってその考えが合っているのか不安になるで反応、調整。
対処法:考えてしまったら深呼吸するに決定。


8回目(9日後)
経験:ファーストとしての送球には問題なくなっている。ピッチャーとしてもっと強い球が投げられるようになりたい。
目安:投球一連のイメージ
ソフト面
五感:視覚:人:練習中に監督コーチにみられている。
*監督コーチとの関係性でこれまでも反応があったので詳細に検査していく。
これにつながる誤作動はなに?
上級感情:当惑:スローミスしている自分に当惑で反応
→スローミスしてはいけないの由来は?:それを言うコーチで反応、調整。
→スローミスしてはならないという信念を持っている自分→不安で反応。
→その信念を横に置いたらどうなる?→楽しく野球しているで陰性反応。
→野球人生で一番楽しかったのはいつ?中学生で思った通りに野球で来ていたとき。
→それは?三振取ると思ったら取れていたから。
→高校の野球で楽しんでいるイメージは何?:ノーヒットノーラン、三振とっているイメージ
一連の不安イメージと楽しいイメージで交互に調整。


9回目(1週間後)
経過:半分くらいは良い状態になれてきている。ピッチャーとしてフォーム作って投げるとまだ弱い球になる。キャッチボールのようにマウンドから投げると大分良い
ソフト面
感情:期待:チームメイトから前みたいに投げられるように早くなれよと言われるで反応、調整。
感情:逃避:投げられなくていやなことから逃げる⇔バッティングとか今楽しい事をイメージするで交互調整。
エピソード記憶:ピッチャーとして投げられていない映像⇔投げられている映像

【まとめ】 この症例は、投球イップス、送球イップスに悩む高校球児が9回の施術で送球イップス改善、投球イップス5割まで改善した継続治療中症例報告である。
中学生までは父親のサポートがあったことで自分で考えなくても最高のパフォーマンスができていたが、高校に入り監督コーチからの指導に変わって、自分で野球を考えるようになってから投げられなくなってきたようだ。ピッチャーとして無意識で投げてきたことも、高校に入ってからは、投球フォームへのルール作りができたり、ミスはしてはならないといった監督コーチから教え込まれたルールが影響しているようだ。

PCRTでのサポートは、本人の気づいていない領域が陽性反応を示すことがあるので、投げられない1点に悩みが集中し過ぎているイップス選手の思考回路を柔軟にし、脳の誤作動記憶を適応状態に変化させる施術として効果が高いと感じる。今後もサポートして以前と同じように投げられるようになったと喜んで頂ければと思う。