肩関節の関節可動域制限の改善

 
報告者:三好 成子(コアレディスカイロプラクティックオフィス

2012.7.22

【患者】 女性 60代後半
【主訴】 肩の痛み
【既往歴】 数年前バイク事故。継続的なカイロプラクティックトリートメントにより肩の改善は良好である。
最近両手挙上による若干の左右差があり左の肩が上がりにくい。
寝ている時に鋭い痛みが一定の角度によって誘発されるが、その角度から更に肩を上げていくことで、痛みが無くなる。
日常生活での肩の動きはある角度で若干の軽いだるさを感じている。

【ハード面の検査】 整形外科的検査
・カロウエイテスト -
・ホイターサイン -
・ヤンガーソンテスト -
・スピードテスト -
・ゴットマンサイン+(腱板検査)陽性(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)

筋力テスト(弱化筋)
・大円筋 下部僧帽筋(肩峰を後方に引く、肩甲骨を下方に引く検査)
・支配神経C2.3.4 副神経脊髄根
・棘上筋

関節自他動検査
・左腕を自動運動にて挙上することで痛みがでた。
・他動運動にても痛みが出る。

関節可動域
・伸展 左40度 右45度
・外転 左 170度 右175度
・内転 左 0度、右0度
・外旋 左 60度 右60度
・左 内旋 70度 右70度
・左 外旋 0度 右0度
・左の肩の外転 スムーズな動きがない。
・165度外転で少し痛みが出る。その角度を過ぎると、痛みが軽減する。

【仮説診断】 外傷による凍結肩甲
うっ血は二次的充血を起こし、筋、筋膜内の血圧痙攣による無酸素状態と組み合わさり、たんぱく質に富む浮腫性の滲出物や最終的に線維化反応へと進む。凍結肩甲では湿潤性の炎症浮腫が、肩上関節の骨線維性の周辺部位におこる。症状が進むと、強い痛み、筋スパズム、炎症、うっ血、浮腫が発生しやすく癒着へと進行し組織の線維化による癒着、瘢痕化さらには肩周囲の硬化拘縮も起こりうることも考えられる。

【施術方法】 アクティベータベーシックを行い、PCRTのハード面の治療をなった。

エネルギーブロック検査(ハード面のEB検査)
・頭頂部 高さ5センチあたりのところでEB検出
・右後頭窩 促通を加えることでEB検出
・腹臥位検査 左肩甲骨上腕関節外転の最終関節可動域165度あたり牽引でEB検出
・左肩甲骨外転検査 160度から前方にねじりを加え牽引でEB検出

PCRT施術
ニューロパターンセラピーのハード面の施術
頭頂部では患者さんにEBの領域をイメージしてもらい腹臥位L5領域+呼吸振動法でのアジャスト
・左後頭部受容器振動法(第三法)C2棘突起+呼吸振動法
・左肩甲骨上腕関節外転の最終関節可動域165度の施術
・左肩甲骨外転160度からさらに前方にねじりを加え牽引を加えた時の施術
上記は陽性肢位にて伸長の持続圧を5秒程度加え第三法での呼吸振動法アジャストメントをおこなった。
術後関節可動域
伸展 左45度 右45度
外転 左 175度 右175度
内転 左 0度、右0度
外旋 左 60度 右60度
左 内旋 70度 右70度
左 外旋 0度 右0度

【施術後評価】 関節自他動検査
・左腕を自動運動にて挙上することで痛み軽減。
・他動運動に痛み軽減。
・165度外転における痛は無くなった。
・挙上における左右差なし

【考察】 体幹や四肢に関係する動きには、神経による機能が関与する。脳が予測した指令に対し体幹や四肢による神経系の誤動作があると痛みとして現れる。(ラマチャンドラ、脳のなかの幽霊)
肩の症状(一過性の痛み)は、筋が伸張されることによる筋紡錘メカニズムの誤作動によるローテーターカフ筋の連携活動不全が、患者の可動性の制限や自他動運動による痛みとして現れたと思われる。
この痛みはおそらく受容器からの問題が関与し、筋紡錘、腱紡錘の1a線維の発火、運動神経(α-運動ニューロン)興奮、肩の外転の筋肉の筋の活動などの一連の神経メカニズムの不全がなされ、筋紡錘内部のγ-運動ニューロン発火頻度による異常が筋紡錘の感度を低下させ、適切なタイミングで収縮が行われず痛みが再現されたのだと考えられる。
したがってγ-運動神経活動による低下は、筋紡錘の感度を低下(脱感作)させて神経の機能異常を起こし、肩の挙上に関与するローテーターカフの筋の正常な動きを阻害された結果、肩のインピンチメントの痛みを誘発したのだろう。
つまりγ-αニューロンの活動レベルを調整することで筋トーンや反射を修正する事が出来ると考えられる(べックから一部引用)。
PCRTによるパターン振動刺激のアジャストメントは脳幹部位である。身体刺激を行う脳幹部位には、筋トーンのネットワーク機能が備わり、姿勢運動機能調整を担う部位でもある。 パンターン振動による刺激は、中脳延髄網様体や延髄網様体の機能を干渉させγ-αの活動レベルが正常に働きかけ、ローテーターカフの連携運動の改善、自他動運動の痛みの軽減、可動性の改善がみられたのだと考えられる。