左顎の痛み 顎関節症

 
報告者:国島 勉(ライフカイロプラクティックセンター

2014.3.8

【患者】 女性 50代 会社員
【主訴】 硬いものを噛んだ時に顎がガクッとなり、その後だんだんと左顎の痛みが酷くなる。

【病歴】 今回の主訴は、直近の出来事である硬いものを噛んだ後からの左顎の痛みであるが、20年位前に自転車事故で左顔面を強打、左顔面麻痺になったことあり。

以降、主訴発生前も、顎の痛みに伴う開きの悪さと食事時などのカクッという感覚はずっと感じていた。

【問診】 自転車事故から長年痛めていた左顎なので元々弱いから仕方ないこともあるのだけど、今回の痛みで食事を摂るのも不自由なので何とかしたいとの訴え。

【施術】 ・1回目

開けるのも噛むのも痛い。

開口値(MOM):指1本

カクッという。(音、感覚)

施術は、主訴の硬いものを噛んだ時の衝撃以降酷くなったという事からまずハード面(肉体面)から神経関節機能障害の改善のためアクティベータメソッドにて行う。ベーシック+TMJ(側頭下顎関節)をプロトコルに沿い施術。*以降はアクティベータによる施術はAMと略す。

MOM:指2本

開け閉めもスムーズになる。


・2回目

カクッという感覚と痛みはあるが、だいぶ調子よく食べるのも楽になった。

MOM:指3本

AMにて神経関節機能障害へのアプローチ後、問診時から「脳の学習記憶」による問題が疑われたので心身条件反射療法(以降PCRTと略す)にてエネルギーブロック(以降EBと略す)をチェック。

セルフイメージ(症状のある自分を客観的映像的イメージ+聴覚情報:「治るのに時間がかかるだろうな~」)にてEB確認(陳述記憶)。PCRT調整。


・3回目

前回までの施術にて、硬いものを食べた事により酷くなった痛み、つまり主訴に関してはほぼOKとなる。後は元々あった自転車事故後継続していた左顎開けきったときの痛みとカクッという感覚だけとなる。

AMにて神経関節機能障害改善後、PCRTにて自転車事故前後の状況を時系列に沿ってEB反応をチェック。

事故後朝起きた時の自分の顔を見たシーンにて陽性反応。PCRT調整。


・4回目

AMアプローチ後、PCRTにて感情面を検査。「連帯感」にて陽性。患者さまも思い当る事あり。

左肺の経絡EBと併せPCRT調整。


・5回目

左顎開けきろうとしたときに少しだけカクッという感覚と少々の痛みが残るが調子は良い。

AMアプローチ後、PCRTにて事故時の「学習記憶」をチェック。以下の2つの陽性反応。

・自転車で転んだシーン(出来事記憶、映像的記憶)

・事故で痛めたしずっとだからカクッとするのは仕方ない(意味記憶、言語的記憶)PCRT調整。


・6回目

痛みは全くなく顎の調子は非常に良い。硬いものや口を大きく開けた時にカクッという感覚が本当にたまに出ることがあるけど気にならないレベルにまで改善。

【考察】 側頭下顎関節に関係する不調全般が実質的に顎関節症と表現され、はっきりとした原因は知られていない。生活習慣や肉体的精神的ストレスなど様々な要因が絡み合って発症すると考えられている。

今回は、自転車事故と硬いものを噛んだ時の衝撃というどちらも外傷に起因して発症したケースである。このようなケースでは通常顎関節の構造的異常に注目されるが、外傷を起因とするケースにおいても明らかな顎関節の異常が認められない例も多々存在する。今回も医療機関による検査では明らかな異常はなく治療にはいたりませんでした。

一般的には病気や健康を考えるにあたり目で見て確認できる構造異常にばかり原因を求める傾向があります。もちろん構造的な問題を検査する事もとても大切です。そこから健康を取り戻す患者さまも多くいらっしゃいます。

しかし、目で確認できる構造異常だけに原因があるとは限らないということです。目では確認できない機能的な問題や生体エネルギー的な問題もかなりの割合で存在するという事です。

今回の症例においても、まずAMによる機能障害の改善から良い結果につながっています。更に今回非常に顕著に効果があったと感じたのは2回目、5回目の「脳の学習記憶」(脳の可塑性)に対するアプローチでした。

記憶は大きく分けると「短期記憶」と「長期記憶」に分けられます。更に長期記憶は「非陳述記憶」と「陳述記憶」に分けられ、頭で覚える陳述記憶は「出来事記憶」と「意味記憶」に分類されます。

(※一番下の図を参照)

2回目のセルフイメージ調整後の改善。更に5回目の「自転車事故で顎を痛めた」という出来事記憶と、事故で痛めその後の長年の経験から意味づけされた「カクッとするのは仕方ない」という思い込みのPCRT調整後の変化は著しいものでした。

特に患者さまの訴える「カクッという感覚や音」に関しては、既に長年に渡り抱え続けた問題であるため、構造的にも関節円板や靭帯などの変成や癒着などによる影響が多々考えられる状況。その中で構造的なアプローチなしの「学習記憶」による調整のみでここまでの改善がみられるという点で、構造的な観点からだけでなく機能的エネルギー的な観点からも見ることが非常に大切であるという事を改めて考えさせられた症例であった。