野球指導者の投球、送球イップス

 
症例テーマ:
●野球指導者の投球、送球イップス
 
報告者情報:
氏名:篠﨑大輔
開業歴:10年
PCRT歴:7年
施術院名:バースデーカイロプラクティック
初診年月日:2022年3月16日
報告期日・2022年8月18日
 
症例要約:
 

結果判断:
完治 or 未完治
完治
治療期間: 2022年3月16日〜2022年7月13日
通院回数: 7回
一回の治療期間 40分以内
治療経過の良し悪し: 良好

 
治療回数毎のスケール表
 
  初回 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
症状の程度(イップス全体) 6 5 4 4 2 1  1
症状に対する予期不安 10 8 4 4 3 1  2
CGI-I(初回と比較した改善の程度)   4 2 1 1  1
CGI-S(初回のイップス症状の程度) 5 ←初回時のみ入力

 
はじめに:
本症例は、小学生野球指導者の投球、送球イップスの施術症例である。
 
患者の愁訴:
・小学生の指導中にキャッチボール、バッティングピッチャ、送球全般で、手首が固まる、ボールが引っかかる、すっぽ抜ける、力が入らない、指先の感覚がなくなるなどの症状が出現する。
 
患者情報:
・38歳、男性、会社員
・現小学生野球指導者
・元高校野球指導者
 
発症からの経緯:
・過去、草野球中にピッチャーゴロを送球ミスした頃からイップス症状が出現。
・自己対策として、ネットスローやノーモッションスローイングなどをしたが一時的で完治はしなかった。
 

 
初回〜通院施術回数毎の記録
 
初回:R4,7月6日
 

症状の程度 6/10
予期不安 10/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度)  
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) 5/7

 
●目安検査
 
 検査部位と刺激動作 調整前 調整後
陽性 陰性 陽性  陰性
右手首背屈    
症状イメージ(バッティングピッチャー)    
症状イメージ(キャッチボール7m)    

 
●EB検査
 
身体系&情報系EB検査部位と刺激・動作 陽性 陰性
右手関節伸筋群  
症状イメージ(バッティングピッチャー)  
症状イメージ(キャッチボール7m)  

 
ハード面調整法:
● AMベイシック
 
ソフト面調整法
● PCRT認知調整法
 
情報系EB 反応言語 内容 調整後
右手関節心筋群   意欲 手首をスナップさせて投げること
→過去上手くいっていたから
陰性化
症状イメージ
(バッティングピッチャー)
劣等 ストライクに入れなければならないのに入れられない
陰性化
症状イメージ
(キャッチボール7m)
探究心 投げ方
早く、正確に投げるための方法を探究
陰性化

施術後、コーチング、アドバイスなどでサポート。
 

 
2回目:2週間後来院 2022.3.29
 
患者コメント(愁訴):
・キャッチボールが大分楽になった。
・キャッチャー時の返球も良い。
・バッティングピッチャー時の感覚がまだ悪い。
 
イップス症状の数値化:
 

症状の程度 5/10
予期不安 8/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 3
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) 5/7

 
●目安検査&EB検査
 
 検査部位と刺激動作 調整前 調整後
陽性 陰性 陽性  陰性
症状イメージ(バッティングピッチャー)+右第2、3指抵抗
   

 
ソフト面調整法
● PCRT認知調整法
 
情報系EB 反応言語 内容 調整後
症状イメージ(バッティングピッチャー)+右第2、3指抵抗   恐怖 バッティングピッチャーとして
ストライクに入れなければ練習にならない
→自分なんていらないと思われることへの恐怖
陰性化
義務 子供達に打たせなければならない
陰性化
執着心 指導者になっても上手くなりたい
→プレーを見せられる指導者でいたいから
→小学生の指導者になって周囲の指導者が見せられる上手い指導者ばかりだから
陰性化

施術後、コーチング、アドバイスなどでサポート
 

 
3回目:2週間後来院 2022.4.15
 
患者コメント(愁訴):
・ゴロの捌き方を子供達に見せる場面で引っかかる。
・バッティングピッチャーでの症状も改善してきているがもう一歩。
・キャッチボールは大丈夫。
 
イップス症状の数値化:
 

症状の程度 4/10
予期不安 4/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 3
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) 5/7

 
●目安検査&EB検査
 
  陽性 陰性
症状イメージ(バッティングピッチャー)+右第2、3指抵抗
 

 
ソフト面調整法:
● PCRT認知調整法
 
情報系EB 反応言語 内容 調整後
症状イメージ(バッティングピッチャー)+右第2、3指抵抗 

義務 ストライクを投げなければならない
→子供達にたくさん練習させてあげたいから
陰性化
恐怖 ストライクが入らないことへの恐怖
→子供達の練習にならない
→指導者たちからの評価が下がる
陰性化
猜疑心 自分の考えた練習をさせていて意味があるのかなと自分を疑う 陰性化
自省心 子供達への指示、指導の言い方が言い過ぎてないか反省する 陰性化

施術後、コーチング、アドバイスなどでサポート
 

 
4回目:2週間後来院 2022.4.27
 
患者コメント(愁訴):
・全体的に調子が良くなってきた。
・キャッチボールは問題ない。
・バッティングピッチャーは投球位置を伸ばすと症状出現。3/10
・ゴロを捌く指導の時も症状出現。4/10
 
イップス症状の数値化:
 

症状の程度 4/10
予期不安 4/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 2
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) 5/7

 
●目安検査&EB検査
 
  陽性 陰性
症状イメージ(バッティングピッチャー)  
症状イメージ(ゴロ捌く)  
下肢軸からの体軸抑制系  

 
ソフト面調整法:
● PCRT認知調整法
 
情報系EB 反応言語 内容 調整後
症状イメージ(バッティングピッチャー) 羞恥心 上手く見せられない指導者は恥
陰性化
執着心 理想の野球指導者像へのこだわり
→復讐心
→高校時代、指導者に過剰に怒られてきたため気を遣っていた
→子供達が雰囲気よく練習できるようにフォローにまわる指導者であるべきというこだわり
陰性化
症状イメージ(ゴロ捌く) 恐怖 暴投してしまうことへの恐怖
→子供達からの信頼を失う
陰性化

身体系EB 反応言語 内容 調整後
下肢軸からの体軸抑制系+組み合わせ:身体感覚:投球動作時、どこに力を入れて良いかわからないイメージ
義務 キレのある良いボールをしっかり投げなければならない
陰性化

施術後、コーチング、アドバイスなどでサポート。
 

 
5回目:2週間後来院 2022.5.10
 
患者コメント(愁訴):
・かなり投げられるようになった。
・他のコーチがキャッチャーで実戦形式の練習をしている時に少し違和感。
・球数が増えてくると少し引っかかる感じがある。
 
イップス症状の数値化:
 

症状の程度 2/10
予期不安 3/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 1
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) 5/7

 
●目安検査&EB検査
 
  陽性 陰性
症状イメージ
→他のコーチがキャッチャーで実戦形式の練習をしている時
 ○  
症状イメージ
→球数が多くなって症状出現イメージ
 

 
ソフト面調整法:
● PCRT認知調整法
 
情報系EB 反応言語 内容 調整後
症状イメージ
→他のコーチがキャッチャーで実戦形式の練習をしている時


他人の声 症状イメージ場面での保護者の声
+組み合わせ:執着心:指導者として
→実戦に近い形で練習させてあげたい
→子供の投球スピードに合わせて投げなければならない
陰性化
探究心 指導者として
→開示していない
陰性化
症状イメージ
→球数が多くなって症状出現イメージ
エピソード記憶 陽性イメージ:投げられない映像
陰性イメージ:カラー映像で投げられている映像
陰性化

施術後、コーチング、アドバイスなどでサポート。
 

 
6回目:4週間後来院 2022.6.7
 
患者コメント(愁訴):
・8〜9割くらい改善している。
・バッティングピッチャー時少しきになる程度。
 
イップス症状の数値化:
 

症状の程度 1/10
予期不安 1/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 1
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) 5/7

 
●目安検査&EB検査
 
  陽性 陰性
症状イメージ(バッティングピッチャー)  
身体全体に力をいれる  

 
ソフト面調整法:
● PCRT認知調整法
 
情報系EB 身体系EB 反応言語 内容 調整後
症状イメージ(バッティングピッチャー)

 
恐怖 子供にデッドボールを当ててしまったらという不安
陰性化
意欲 バッティングピッチャーとして
→ストライクを入れてあげたい
陰性化
警戒心 指導者として子供達との関係
→悪い方向に指導してしまったらどうしよう
陰性化

身体系EB 反応言語 内容 調整後
身体全体に力をいれる
自立心 指導者として
→周囲に頼らず自分でなんでもやってしまう
→高校時代の指導を実践して投げ方がおかしくなった経験から
→その指導はよくない指導と思っているから
陰性化

施術後、コーチング、アドバイスなどでサポート。
 

 
7回目:5週間後来院 2022.7.13
 
患者コメント(愁訴):
・ほぼ投げられる。
・バッティングピッチャー時少し引っ掛けることがある程度。
・投げられるようになって頑張りすぎたのか練習後に肩の張りを感じる。
 
イップス症状の数値化:
 

症状の程度 1/10
予期不安 2/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 1
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) 5/7

 
●目安検査&EB検査
 
 検査部位と刺激動作 調整前 調整後
陽性 陰性 陽性  陰性
右肩甲上腕関節屈曲、外転制限
   
右肩の張り感イメージ
   
症状イメージ(バッティングピッチャー)
   

 
ハード面調整法:
● AMベイシック&アドバンス
 
ソフト面調整法:
● PCRT認知調整法
 
情報系EB 身体系EB 反応言語 内容 調整後
右肩の張り感イメージ 警戒心 指導者として投げられなくなったらどうしよう
陰性化
自尊心 父として
→投げられない父を見せたくない
→指導者としての父だからできるところを見せなければならない
→指導者、監督の理想像を持っている
→他の指導者と比較して
陰性化
症状イメージ(バッティングピッチャー) 成長 満足度:意識5、無意識7 陰性化

施術後、コーチング、アドバイスなどでサポート
 
特記すべきコメント
本症例は、通常施術よりも長い時間確保して施術するコースを実施した。理由は、遠方からの来院のため短期間で繰り返し来院できないためである。さらに、通常施術後にコーチングやアドバイスでサポートも行った。
 

 
考察
本症例は、小学生野球指導者の投球、送球イップスが改善した症例である。計7回の施術を行い5回目以降、症状改善は良好。
本クライアントは、初回から素直に自分を認識し改善へ向けて良好な関係が築けてきた。また、コーチングとアドバイスで自分の思考の癖に気づき、野球への取り組みが施術を繰り返す毎に変わってきたとのことだった。これらがイップス改善のポイントだったと感じる。
本クライアントの指導者としての理想は、子供達に野球を楽しんで欲しいという思いだったが、その思いが強すぎるがあまり様々な「べき思考」を作り上げていた。その結果、自分自身が野球を楽しめなくなっていたことが大きな気づきだったようだ。
コーチング、アドバイス内容は、その場の流れで都度行っていたため記録にない。今後は、イップス改善のキーポイントになるかもしれない会話等は記録に残し、より多くの症例に活かしていきたい。