テニスのサーブトスイップス
症例テーマ:
●テニスのサーブトスイップス
報告者情報:
●氏名:篠﨑大輔
●開業歴:10年
●PCRT歴:7年
●施術院名:バースデーカイロプラクティック
●初診年月日:2022年5月24日
●報告期日・2022年8月16日
症例要約:
結果判断: 完治 or 未完治 |
未完治 |
治療期間: | 2022年5月24日〜2022年6月14日 |
通院回数: | 3回 |
一回の治療期間 | 30分以内 |
治療経過の良し悪し: | 3回の施術で軽減したが、完治に至る前に通院をやめた症例である |
治療回数毎のスケール表
初回 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 | 6回目 | 7回目 | |
症状の程度(イップス全体) | 8 | 4 | 4 | ||||
症状に対する予期不安 | 10 | 4 | 4 | ||||
CGI-I(初回と比較した改善の程度) | 2 | 2 | |||||
CGI-S(初回のイップス症状の程度) | 5 | ←初回時のみ入力 |
はじめに:
本症例は、日本トップレベルのテニス選手のサーブを高くあげようとする時に恐怖心と左腕がこわばってしまうイップス症状に対する施術を行った症例報告である。
患者の愁訴:
・テニスの高いサーブをあげる時に左腕がこわばってしまい上げられない。
・上げる前に恐怖心がある。
患者情報:
・25歳 女性
・大学助教授兼コーチの日本トップ選手
発症からの経緯:
2年前の講習会での試合中に届かないくらいひどいトスを上げてしまったことがきっかけとなり発症。
プレッシャーが強く、見られている場面で起こる傾向がある。
イップスについては、監督、ペア、家族が知っている。
これまで、心理カウンセリングを2回、催眠療法1回受けに行ったが効果はあまりなかった。
初回〜通院施術回数毎の記録
初回:2022.5.24
症状の程度 | 8/10 |
予期不安 | 10/10 |
CGI-I(初回と比較した改善の程度) | |
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) | 5/7 |
●目安検査
検査部位と刺激動作 | 調整前 | 調整後 | ||
陽性 | 陰性 | 陽性 | 陰性 | |
左肘伸展位 | ○ | ○ | ||
症状イメージ | ○ | ○ |
●EB検査
身体系&情報系EB検査部位と刺激・動作 | 陽性 | 陰性 |
症状イメージ | ○ |
ハード面調整法:
● AMベイシック
ソフト面調整法
● PCRT認知調整法
情報系EB | 反応言語 | 内容 | 調整後 |
症状イメージ | 警戒心 | 周囲からどのように見られているのか警戒 →上手くやらないと評価が落ちることへの警戒 →自分に注目してもらえなくなることへの警戒 |
陰性化 |
警戒心 | 新人に負けることを警戒 →自分に勝ったと周囲に自慢され、周囲からそんなに強くないのかもと思われることへの警戒 |
陰性化 | |
復讐心 | イップスの原因になった講習会への参加を指示したコーチで反応。 内容は開示せずに、コーチに対する納得のいっていない思いを想起、その場面での自分のべきと相手のべきを想起して調整。 |
陰性化 |
2回目:3日後来院 2022.5.31
患者コメント(愁訴):
・前回の施術後、試合でトスを上げる場面があったが気にならない程度に改善していた。
・周囲の目を気にしたり、勝たなければと思ったりすることも無くなった
イップス症状の数値化:
症状の程度 | 4/10 |
予期不安 | 410 |
CGI-I(初回と比較した改善の程度) | 2 |
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) | 5/7 |
●目安検査&EB検査
陽性 | 陰性 | |
症状イメージ(トスが上げられない場面) |
○ |
ソフト面調整法
● PCRT認知調整法
情報系EB | 反応言語 | 内容 | 調整後 |
症状イメージ(トスが上げられない場面) | 団結心 | 来年にペアが辞めてしまうのでかんばりたい →自分の調子が悪くて負けるのは嫌 |
陰性化 |
団結心 | 所属大学のコーチであり、助教授であるため、そこの大学生に負けてはならない |
陰性化 | |
犠牲心 | 前回反応したコーチ。 なぜかわからないがその人をイメージするともやもやする思いを想起 |
陰性化 |
3回目:2週間後来院 2022.6.14
患者コメント(愁訴):
・大学見学に来た高校生との試合でイップス症状が出る場面もあったが、カットサーブで対応し勝てた。
・2回の施術でトスへの恐怖心が減少し、テニスの楽しみを感じられるようになってきた。
イップス症状の数値化:
症状の程度 | 4/10 |
予期不安 | 8/10 |
CGI-I(初回と比較した改善の程度) | 2 |
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) | 5/7 |
●目安検査&EB検査
陽性 | 陰性 | |
高校生との試合での症状イメージ |
○ |
ソフト面調整法:
● PCRT認知調整法
情報系EB | 反応言語 | 内容 | 調整後 |
高校生との試合での症状イメージ |
猜疑心 | トスが上げられないかも |
陰性化 |
虚栄心 | 能力的: できる自分を見せなければならない →自分の立場上、能力がある自分を見せなければならない |
陰性化 |
考察
世界大会で優勝を経験している日本トップレベルの選手であり、大学で助教授として授業でテニスを教えたり、大学チームのコーチをしたりと様々な立場を持っている患者であった。
初回から素直に自分を探索し、イップスとの関係を紐解けたことが早期改善につながったと思われる。特に、トップ選手、コーチという立場的にこうあるべき、こうでなければならないという思い込みがあることを認識できたことは、気楽になれるポイントだったと思われる。また、イップスの原因となった講習会への参加を指示したコーチ仲間との関係が2回連続で反応したことも「なるほど」と納得感が得られたと思われる。
初回の施術でイップス改善が見られ、2回の施術でイップスへの恐怖心が大分消えたようで、テニスも楽しめるようになったとのことで、また困ったら来院するということで終了した。
1ヶ月後に連絡をしたところ、恐怖心がまだあるとのことだったが、受診するかは不明。
遠方からの来院だったため定期的に何度も受けることが困難だったのかもしれないが、繰り返しPCRTを受けていけば改善していきそうな印象はあった。劇的な改善を求めている方も少なくないが、繰り返しの刺激で脳の誤作動記憶を健全な状態に再学習していくことがイップス改善には必要であることを強く伝えていく必要性があったと反省点が残る症例であった。