バドミントンサーブイップス

 
症例テーマ:
●バドミントンサーブイップス
 
報告者情報:
氏名:倉持怜史
開業歴:10年
PCRT歴:4年
施術院名:接骨院くら
初診年月日:2022年7月6日(イップス治療開始)
報告期日・2022年8月12日
 
症例要約:
 

結果判断:
完治 or 未完治
完治
施術継続中
治療期間: 2022年7月6日〜2022年8月22日
通院回数: 6回
一回の治療期間 45分以内
治療経過の良し悪し: 6回の施術で改善し経過良好

 
治療回数毎のスケール表
 
  初回 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
症状の程度(イップス全体)  
症状に対する予期不安 10 10  
CGI-I(初回と比較した改善の程度)    
CGI-S(初回のイップス症状の程度) ←初回時のみ入力

 
はじめに:
バドミントンの監督さんからご紹介頂いた患者さん。数年前から腰痛、首痛、右肩痛、顎関節痛に悩まされ立ち仕事に支障がでて退職されたとのこと。病院、整体と色んな施術を試すがなかなか改善しないと相談を受ける。
PCRT認知調整法で施術させて頂き、身体の辛さがかなり改善しバトミントンも再開出来るようになってきた。以前から患っていたサーブイップスを改善したいとの相談を受け、身体のメンテナンスと共にイップス治療スタート。まだ施術継続中だが経過を報告させて頂く。
 
患者の愁訴:
サーブイップスを改善したい(特に一球目)
腰痛、頚部痛、頭痛の改善
 
患者情報:
39歳 女性
家族構成:夫 長男(9歳)長女(5歳)
小学生からバトミントンを始め、6年生の頃には栃木県大会優勝。中学、高校と文武両道の生活を送り、筑波大学バドミントン部でバドミントンに励む。
現在は長男のバトミントンクラブの練習をサポートしながら指導する。
 
発症からの経緯:
大学生の頃に発症し、大学3年時に、症状が悪化したとのこと。大学卒業、社会人になり、結婚。最初に発症してから20年近く経っているが未だにサーブイップスが改善してないとのこと。
 

 
初回〜通院施術回数毎の記録
 
初回:R4,7月6日
 
目安検査
一般的検査(現代医療の検査法)

  • ・可動域制限:腰部後屈 前屈
  • ・圧痛 :上部僧帽筋 脊柱起立筋
  • ・動作痛:腰部後屈(腰部)

 
イップス症状の数値化
 

症状の程度 8/10
予期不安 10/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度)  
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) 4/7

 
●PCRT目安検査
 
  陽性 陰性
基本バランス  
頭痛イメージ(情報系)+蝶形骨音叉刺激  
症状イメージ(情報系):サーブイメージ(一球目)  

 
●EB検査
 
身体系&情報系EB検査部位と刺激・動作 陽性 陰性
頭痛イメージ(情報系)+蝶形骨音叉刺激  
症状イメージ(情報系):サーブイメージ(一球目)  

 
ハード面調整法:
● AMベイシック 意念調整法(頚部骨系)
 
ソフト面調整法
● PCRT認知調整法
 
補足説明:
「反応言語」とは、PCRT認知調整法の検査で用いる辺縁系領域に関連する言語チャートからPRT(生体反応検査表)によって陽性反応が示された言語である。臨床では「キーワード」と呼ぶことが多い。
 
情報系EB 身体系EB 反応言語 内容 調整後
頭痛イメージ+蝶形骨 執着心 長男のバトミントンクラブの練習。練習はお遊びにならずにしっかりやるべき 陰性化
サーブイメージ 劣等 サーブが得意ではない 陰性化

 
●目安検査の再評価結果:
 
  陽性 陰性
基本バランス:全て    ○
頭痛イメージ(情報系)+蝶形骨音叉刺激    ○
症状イメージ(情報系):サーブイメージ(一球目)    ○

 

 
2回目:10日後来院 R4,7月16日
 
患者コメント(愁訴):
前回施術の次の日にバトミントン練習でサーブを打ったら一本目から思うように打てた(久しぶりの感覚とのこと) NRS10→1(患者の主観)
しかし、その数日後にまた戻ってしまった NRS10→8

 
イップス症状の数値化:
 

症状の程度 6/10
予期不安 10/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 3/7
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) 4/7

 
●PCRT目安検査
 
  陽性 陰性
基本バランス:全て陰性    ○
頭痛イメージ(情報系)+蝶形骨音叉刺激  
症状イメージ(情報系):サーブイメージ(一球目)  

 
●EB検査
 
身体系&情報系EB検査部位と刺激・動作 陽性 陰性
左腸骨骨系ー肺経  
頭痛イメージ(情報系)+蝶形骨音叉刺激  
サーブイメージ(一球目)+橈骨系(タッピング刺激)  

 
ハード面調整法:
● AMベイシック 意念調整法(頸椎骨系 蝶形骨骨形ー肺経)
 
ソフト面調整法
● PCRT認知調整法
 
情報系EB 身体系EB 反応言語 内容 調整後
サーブイメージ(一球目)橈骨骨系 挑戦 大学でのバドミントン 陰性化
同上 同上 くり返し練習し、上手くなりたい 勝ちたい 陰性化
同上 同上 拾う時の打点が高いと指摘され、その動きを何回もパターン練習した(その練習に納得して練習していない自分がいた)
※今でも納得していないとのこと
陰性化
同上 探求心 大学4年の時、ダブルスの戦術を試行錯誤し探求 陰性化

 
●目安検査の再評価結果:
 
  陽性 陰性
基本バランス:全て    ○
頭痛イメージ(情報系)+蝶形骨音叉刺激    ○
症状イメージ(情報系):サーブイメージ(一球目)+橈骨系(タッピング刺激)    ○

 

 
3回目:9日後来院 R4,7月25日
 
患者コメント(愁訴):
●前回施術後のバドミントンサーブ、調子良好。NRS10→2or3(本人の主観)
●前腕部の動きが改善し、ヒッティングの瞬間に手首がロックし動きにくい感覚
 
イップス症状の数値化:
 

症状の程度 5/10
予期不安 8/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 3/7
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) 4/7

 
●PCRT目安検査
 
  陽性 陰性
基本バランス:左骨盤 頸部左回旋 右回旋  
頭痛イメージ(情報系)+蝶形骨骨系(音叉刺激)  
症状イメージ(情報系):サーブイメージ(一球目)  
症状イメージ(情報系):サーブイメージ(ヒッティングの瞬間)  

 
●EB検査
 
身体系&情報系EB検査部位と刺激・動作 陽性 陰性
胸椎4,5番骨系  
頸椎軟骨系  
サーブのヒッティング時の上肢の角度で手関節屈曲 MMT  
サーブのヒッティング時の上肢の角度で第2指、3指、4指屈曲 MMT  
サーブのヒッティング時イメージ+第2~4中手骨骨系  

 
ハード面調整法:
● AMベイシック 意念調整法(胸椎骨系 頸椎軟骨系)
 
ソフト面調整法:
● PCRT認知調整法
 
情報系EB 身体系EB 反応言語 内容 調整後
サーブイメージ(ヒッテイングの瞬間) 第2〜4中手骨骨系 復讐心 長男のバドミントンクラブに納得いかない 陰性化
同上 同上 練習がグズグズしており、メリハリがない 陰性化
同上 同上 指導中に子供たちが言うことを聞かない、思ったように指導できない自分がいる 陰性化
同上 同上 旦那が指導するとき、外部コーチが指導してる時は子供たちも言うことを聞き、良い練習ができている 陰性化

 
●目安検査の再評価結果:
 
  陽性 陰性
基本バランス:全て    ○
頭痛イメージ(情報系)+蝶形骨骨系(音叉刺激)    ○
症状イメージ(情報系):サーブイメージ(ヒッティングの瞬間)    ○
サーブのヒッティング時の上肢の角度で手関節屈曲 MMT強化    
サーブのヒッティング時の上肢の角度で第2指、3指、4指屈曲 MMT強化    
サーブのヒッティング時イメージ+第2〜4中手骨骨系  

 

 
4回目:9日後来院 R4,8月3日
 
患者コメント(愁訴):
メールでサーブの調子の連絡を頂いた。
・サーブの打った感触で前腕の回転、動きは自信をもてるくらい改善した。
・ヒッティングの確率も完ぺきではないものの90%はそれなりに思ったところに飛ぶ。
・20〜30球に1球、イップス症状が明らかに出る。
・イップス症状が出る際はヒッティング時に手首、手掌が動かなくなり手首を返せなくなる。
・前回、バドミントン練習後に右顔面に違和感、右首に突っ張り感出現。
 
イップス症状の数値化:
 

症状の程度 4/10
予期不安 5/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 2/7
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) 4/7

 
●PCRT目安検査
 
  陽性 陰性
基本バランス:全て陰性   ○ 
顔面神経 右顔面をすぼめる  
三叉神経検査 奥歯で噛みしめる 右顔面を触る  
三叉神経検査 音叉で眼下下孔 オトガイ孔を刺激  
症状イメージ(情報系):サーブイメージ一球目(ヒッティングの瞬間)  

 
●EB検査
 
身体系&情報系EB検査部位と刺激・動作 陽性 陰性
顔面神経 右顔面をすぼめる  
三叉神経検査 音叉で眼窩下孔 オトガイ下孔を刺激  
症状イメージ(情報系):サーブイメージ一球目(ヒッティングの瞬間) 第2〜4指の屈筋腱  

 
ハード面調整法:
● AMベイシック 意念調整法(腰椎骨系)
 
ソフト面調整法:
● PCRT認知調整法
 
情報系EB 身体系EB 反応言語 内容 調整後
サーブイメージ(ヒッテイングの瞬間)第2〜4指の屈筋腱
脳リンク(大脳辺縁系)
競争心 バドミントンに関して練習から負けたくない 負けず嫌い 陰性化
同上 同上 自分自身との競争心
負けを認めたくない自分がいる
陰性化
同上 同上 自分自身との競争心が出る出所は?
幼児の頃、いつもお父さんとかけっこして競争していた過去の記憶で調整
陰性化

 
●目安検査の再評価結果:
 
  陽性 陰性
顔面神経 右顔面をすぼめる    ○
三叉神経検査 奥歯で噛みしめる 右顔面を触る    ○
症状イメージ(情報系):サーブイメージ一球目(ヒッティングの瞬間)    ○

 
特記すべきコメント
PCRT認知調整法で調整後、シャドーでサーブ動作をして頂いた。
患者もはっきり分かるほどにヒッティング時の手首がスムーズに返るようになり喜んで頂いた。
 

 
5回目:9日後来院 R4,8月12日
 
患者コメント(愁訴):
8月9日に体育館でバドミントン練習した
今までで一番不安なく意識しないでサーブを打てるようになってきた
ヒッティング時の手首の動きが良くなった
フォロースルーの時に、右上腕部が固まる感じが気になる
右頸部の張り感を改善したい
 
イップス症状の数値化:
 

症状の程度 3/10
予期不安 4/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 2/7
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) 4/7

 
●PCRT目安検査
 
  陽性 陰性
基本バランス:全て陰性   ○ 
症状イメージ(情報系):サーブイメージ一球目(ヒッティングの瞬間)  
症状イメージ(情報系):サーブのフォロースルー  

 
●EB検査
 
身体系&情報系EB検査部位と刺激・動作 陽性 陰性
症状イメージ(情報系):サーブフォロースルー 右上腕部骨系  

 
ハード面調整法:
● AMベイシック アドバンス(頸部 顎関節)
 
ソフト面調整法:
● PCRT認知調整法
 
情報系EB 身体系EB 反応言語 内容 調整後
サーブフォロースルー 右上腕部骨系 成長 自分関係
自分の中の想いとして、今の仕事でステップアップし成長していきたい
陰性化
同上 同上 前職の仕事は関係していますか?と患者に聞かれ
PRTで陽性となり影響あると思いますと返答
前職では家庭の都合もあり退職を決めたとのこと。本心ではさらにステップアップし成長したい自分がいたと
陰性化
同上 同上 成長するということを大切にしているその出所は?
お父さんの影響(仕事人間で、仕事を一生懸命し、尊敬できる父親とのこと)
父親のような人になりたい自分がいる
陰性化

 
●目安検査の再評価結果:
 
  陽性 陰性
症状イメージ(情報系):サーブフォロースルー 右上腕部骨系    ○

 
特記すべきコメント
施術後、サーブイメージをしながらシャドーサーブでサーブ動作をして頂いたが明らかに施術前を比較し腕の動きがスムーズになり、本人も喜んで頂いた
実戦でも思ったように打てるようになることを期待
 

 
6回目:10日後来院 R4,8月22日
 
患者コメント(愁訴):
8月21日バドミントン練習したがサーブ良好(今までで一番)
全球スムーズに打てた
サーブ1本目もOK
球の軌道も良く、気持ちよく練習出来た
サーブを打つ際に、自分の前に壁を感じて打つ時がある(たまに)
練習後、頸部張り、腰部の張り感
 
イップス症状の数値化:
 

症状の程度 1/10
予期不安 3/10
CGI-I(初回と比較した改善の程度) 2/7
CGI-S(初回のイップスの症状の程度) 4/7

 
●PCRT目安検査
 
  陽性 陰性
基本バランス:頸部左右回旋  
症状イメージ(情報系):サーブイメージ一球目  
症状イメージ(情報系):サーブのフォロースルー  
症状イメージ(情報系):サーブを打つ際に、自分の前に壁を感じるイメージ  
頸部を回旋して側屈    
一方の肩を頭の方へ寄せる    

 
●EB検査
 
身体系&情報系EB検査部位と刺激・動作 陽性 陰性
副神経(第Ⅺ脳神経)大脳辺縁系  

 
ハード面調整法:
● AMベイシック アドバンス(脊柱)
 
ソフト面調整法:
● PCRT認知調整法
 
情報系EB 身体系EB 反応言語 内容 調整後
副神経 大脳辺縁系

警戒心 バドミントン練習で自分に対して
練習後、身体が痛くなるのではないかという警戒心
陰性化
同上 同上 指導者の立場で
➡︎厳しく指導することでバドミントンを嫌いにならないかを警戒
➡︎以前、自分の子供が嫌いになってしまったことがあった
陰性化
予期不安3
大脳皮質系ー意味記憶①経験
  20年近くサーブイップスをかかえていたため、また再発するのではないか
➡︎イップスは改善するもの
➡︎誤作動信号が改善すると治るもの
との認識で調整
陰性化

 
●目安検査の再評価結果:
 
  陽性 陰性
頸部を回旋して側屈  
一方の肩を頭の方へ寄せる  

 
特記すべきコメント
前回施術後、サーブイイップスが出ることなく練習を全てできた。
施術前のPCRT目安検査でもサーブイップスイメージ(想起)してもPRT検査で陰性反応となった。
サーブイップスの調整をするようになってから日常生活での身体の不調も安定し、以前困っていたパニック障害も落ち着き、生活しやすいとのこと
サーブイップスだけでなく身体の不調も安定しやすくなったと喜んで頂いた
 

 
考察
バドミントンサーブイイップス。
現在も施術中ではあるが、現時点での症例を報告させて頂く。
 
ポイントは2回目の施術でのPCRT認知調整法での挑戦というキーワードとそこからの内容の認知。
大学バトミントンへの挑戦。イップスに関係する誤作動記憶が本人の中で腑に落ちたような様子をうかがえた。納得しないまま、繰り返しのパターン練習をし、モヤモヤしていた自分がいたことに気が付いたと・・。
バトミントンを探究しているがゆえに、納得できない心の状態での練習がたまたま誤作動信号のスイッチとなっていた。
イップスのみならず、慢性痛の患者でも同じだが、決してネガティブ感情だけが誤作動信号となるわけでなく今回の様に挑戦、意欲、探求心というポジティブワードでも同じように誤作動信号となることを臨床を通して経験する。
 
イップスに関する研究論文を拝読させて頂くと、ネガティブ感情(不安 恐怖 逃避など)がイップスにつながりやすいとの表現があるが決してそうとは思わない。
 
PCRT認知調整法で身体に聞く検査をさせて頂くと感情(ネガティブ ポジティブ)が出てくる前提となる信念、本人が大切にしている信念、価値観が複雑に関係しあい、イップスの誤作動信号となっていることがよく分かる。ポジティブ感情の裏側にはネガティブ感情があり、その逆ももちろんある。その時の状況、場面、さまざまな影響を人は感受し、心は常に揺れ動く。
PCRTを学ばせて頂き、身心相関の奥深さを感じ、イップスを始めジストニア、慢性疼痛などの西洋医学では改善が難しい長引く身体の不調ですら、認知調整法で一つずつ誤作動信号を紐解いていくと必ず光が見えてくることを毎日の臨床で感じる。
 
イップスサーブの施術後、毎回改善がみられ、イップスは改善するかもとの前向きな期待が出てきたことも改善をスムーズにしたと思われる。
もともと、身体のメンテナンスで認知調整法に慣れており、認知が上手な患者でもあり、主体的に施術に参加して頂いたことも良かった。
 
一度改善したイップスが再度、出現することがあるので油断せず、ハード面調整、ソフト面調整ともに大切に施術してまいります。
そして、イップスは改善する事を多くの方に知ってほしい。