腰痛・下肢痛・下肢痺れ
腰痛・下肢痛・下肢痺れ
62歳 女性 | 11回通院 | 完治
報告者・施術院情報
症例要約
施術を繰り返すも症状改善が停滞していたが、10回目の施術において患者との深い対話がきっかけとなり、一気に症状が改善した症例。
これといった大きなきっかけはなく、腰部から下肢にかけて疼痛・痺れが出現。寝る前には調子が良く就寝できるが、朝起き上がる際には腰部・下肢が固まってしまい起き上がることが困難な日々が続いた。当初は朝のみの不調も徐々に悪化し、座位姿勢時などの安静時にも臀部痛が出現し症状が広がった。
以前に手首を骨折し整形外科で固定・リハビリするも改善に至らず、当院での施術で改善した経緯があったため、ラポールがある程度高い状態で施術をスタートできた。
- 右臀部が痛む。朝起き上がる時が特に辛い。
| 症状の程度 | 8/10 |
| 予期不安 | 5/10 |
| CGI-S(初回症状程度) | 5 |
| 身体系・情報系EB | 反応言語 | 内容 | 調整後 |
|---|---|---|---|
| 仙骨骨系・右坐骨骨系 | 警戒心 | 姉との関係性 | 陰性化 |
| 自省心 | 姉との関係性 | 陰性化 | |
| 団結心 | 家族関係 | 陰性化 |
- 日中は症状なし。
- 朝起き上がりがとにかく辛い。前回の右臀部痛が中心部(仙骨部)に変化した。
| 症状の程度 | 8/10 |
| 予期不安 | 6/10 |
| CGI-I(初回比較) | 4 |
| 身体系・情報系EB | 反応言語 | 内容 | 調整後 |
|---|---|---|---|
| 仙骨骨系 | 復讐心 | 夫 | 陰性化 |
| 不安 | 夫 | 陰性化 |
- 前回までの右臀部痛は消失したが、左臀部に症状が出現。
| 症状の程度 | 7/10 |
| 予期不安 | 5/10 |
| CGI-I(初回比較) | 4 |
- 症状は変化なし。朝起き上がり・座位・運転中に左臀部痛残存。
| 症状の程度 | 6/10 |
| 予期不安 | 5/10 |
| CGI-I(初回比較) | 3 |
| 身体系・情報系EB | 反応言語 | 内容 | 調整後 |
|---|---|---|---|
| 左坐骨骨系 | 恐怖 | 義理母 | 陰性化 |
| 犠牲心 | 義理母 | 陰性化 |
- 左臀部痛は変化なし。
- トイレ・運転中の座位で特に痛みが強い。
- 1時間のウォーキングは問題なし。
| 症状の程度 | 6/10 |
| 予期不安 | 5/10 |
| CGI-I(初回比較) | 3 |
| 身体系・情報系EB | 反応言語 | 内容 | 調整後 |
|---|---|---|---|
| 左坐骨骨系・座位姿勢イメージ | 自省心 | その他 | 陰性化 |
- 左臀部痛変化なし。
- 左下腿部痛も座位姿勢時に辛い。
| 症状の程度 | 6/10 |
| 予期不安 | 5/10 |
| CGI-I(初回比較) | 3 |
- ゆっくりしたりお風呂で温まると調子良い。日によって波があるが左臀部痛残存。
| 症状の程度 | 7/10 |
| 予期不安 | 6/10 |
| CGI-I(初回比較) | 4 |
| 身体系・情報系EB | 反応言語 | 内容 | 調整後 |
|---|---|---|---|
| 左腸骨骨系 | 自省心 | 家族・夫 | 陰性化 |
- 仕事中(座位姿勢)に左臀部痛がひどく、じっとしていられなくて体を逃しながら座り仕事をした。
| 症状の程度 | 7/10 |
| 予期不安 | 6/10 |
| CGI-I(初回比較) | 4 |
| 身体系・情報系EB | 反応言語 | 内容 | 調整後 |
|---|---|---|---|
| 左坐骨骨系 | 警戒心 | 長男との心の動き | 陰性化 |
- 痛みレベルに波がある。座位で左坐骨周囲が辛い。
| 症状の程度 | 6/10 |
| 予期不安 | 6/10 |
| CGI-I(初回比較) | 3 |
| 身体系・情報系EB | 反応言語 | 内容 | 調整後 |
|---|---|---|---|
| 左坐骨骨系 | 自省心 | 姉との心の動き | 陰性化 |
- 症状は前回と同じ。
- 以前に腰椎すべり症と診断を受けたことが痛みの原因ではないかとおっしゃった。
| 症状の程度 | 6/10 |
| 予期不安 | 7/10 |
| CGI-I(初回比較) | 3 |
| 身体系・情報系EB | 反応言語 | 内容 | 調整後 |
|---|---|---|---|
| 左坐骨骨系 | 復讐心 | 姉・義兄 | 陰性化 |
約30年前に姉が結婚し同居が始まった。義兄は両親に当たりが強く、その光景にいつもモヤモヤしていた(復讐心)。義兄への納得いかない想いが今も心に深く刻まれていることを話された。「ただただ両親に優しく接してほしかった」との言葉が出た。「本当は姉に会いたいが会いたくない自分もいる」という心の混線に気づかれた。施術後に「姉夫婦のところへ行ってみようかな」とおっしゃっていた。
- 症状改善に大切なことをお伝えしたこと
- 患者さんが本音の自分に目を向けたこと
- 昔の出来事(記憶)の解釈が自然と変容したこと
- 前回施術中にスーッと痛みが引いてそれから調子良い。
| 症状の程度 | 2/10 |
| 予期不安 | 3/10 |
| CGI-I(初回比較) | 1(著明改善) |
本症例は、腰痛および下肢の疼痛・痺れの改善に滞っていたが、対話を契機として速やかに症状改善した症例であり、心理的要因と身体症状との関連性を示唆するものであった。
PCRT認知調整法によって、数十年前の対人関係に関する記憶が現在の心理的葛藤として影響していた可能性が考えられた。特に、過去の記憶に対する解釈の変容が生じたタイミングで症状の軽減が認められたことから、認知的再評価が症状変化に関与した可能性が示唆される。
第10回目の施術が転機となった点は注目に値する。それまでの施術においても認知調整法により心理的要因の関与は示唆されていたが、患者は一貫して姉との関係性を「問題ない」と認識していた。しかし、十分な対話環境が確保された状況下において、過去の感情体験に対する内省が深まり、抑制されていた感情の表出が促された。この過程が認知および情動の再統合につながった可能性がある。
また本症例からは施術環境の重要性も示唆される。周囲の視線や音環境などが患者の自己開示に影響を与える可能性があり、心理的介入を伴う施術においては安心して内面を表出できる環境設定が重要であると考えられる。
PCRTにおける生体反応検査法は、患者の自覚的認識だけでなく無意識レベルの反応を指標として介入を行う点に特徴がある。本症例においても患者の自覚と一致しない反応が繰り返し検出されており、これが介入の手がかりとなった可能性がある。臨床での症例発表の蓄積を継続することで、ボトムアップ的に知見を集積していくことがPCRTの理解を深める上で重要である。
以下は、この症例報告に対するPCRT創始者・保井志之による詳細な臨床解説です。
この症例の核心的な特徴
倉持先生のこの腰痛・下肢痛・下肢痺れの症例報告は、PCRTにおける「長期停滞を経た後に深い対話が転機となる症例」の典型例として、非常に教育的価値の高い記録です。単なる「腰痛の改善」ではなく、患者が長年抱えてきた人間関係の未消化な感情が身体症状として表現されていたという本質が、丁寧な対話の中から浮かび上がってくる点が印象的です。
この症例の最大の特徴は「経過の停滞と突破」にあります。
- 第1〜9回:症状スケール 8→7→6 で推移——9回の施術を重ねても明確な改善傾向が見えない
- 第10回:姉・義兄との30年前の記憶への深い内省と感情表出
- 第11回(17日後):「施術中にスーッと痛みが引いた」と報告、症状8→2へ急速改善
これはPCRTが長期的な人間関係の記憶・感情と身体症状の間の回路を扱っていることを端的に示しています。9回にわたる施術で積み上げてきた「ラポール」と「自己認知の下地」があったからこそ、第10回の深い内省が可能になったとも見ることができます。
症例全体を貫く人間関係の地図
各回で浮かび上がった反応言語と対象人物を俯瞰すると、この患者さんの情動的な世界地図が見えてきます。複数の人間関係が、ほぼ同時進行で精神的負荷をかけていたことが分かります。
注目すべきは、これだけ多様な人間関係の負荷が重なっているにもかかわらず、患者さんは「丁寧・礼儀正しい・人を想う」という特性を持ち、外見上は穏やかに振る舞っていた点です。PCRT的には、この「外向きの穏やかさ」と「内向きの抑圧された感情」のギャップそのものが、身体誤作動を維持し続けていたメカニズムと考えられます。
9回の停滞が持つ意味——「下地の蓄積」として読む
この症例を読む際に最も重要なのは、第1〜9回の「停滞」をどう解釈するかです。数値だけを見ると改善が乏しく、一見すると「効果がなかった」ように映るかもしれません。しかしPCRT的な視点では、この9回は決して無駄ではありませんでした。
PCRTにおける停滞は「下地の蓄積」です。患者が自分の内面に向き合う準備が整うまでの、必要な時間と言えます。倉持先生が9回を通して積み上げたラポールと対話の積み重ねなしに、第10回の転換点は起きなかったでしょう。
— 保井志之 / PCRT創始者第10回の転換点——30年越しの記憶の解放
第10回は、この症例の核心です。この回で何が起きたかを丁寧に見ていくと、PCRTにおける「認知の変容」とは何かが浮かび上がってきます。
まず、患者は「以前に腰椎すべり症と診断を受けたことが痛みの原因ではないか」という言葉を持ち出しました。これは9回の停滞の中で生まれた「意味付け」です。PCRT的には、症状が改善しない中で不安が増大し、その不安を「構造的な原因がある」という外部帰属で処理しようとする心理的防衛反応として理解できます。
倉持先生はここで「腰椎すべり症」という器質的説明に乗るのではなく、改めて「心理・無意識・心の混線が関係していること」を丁寧に説明し直しました。この説明が、患者の内省を深める入口となりました。
「ただただ両親に優しく接してほしかった」——この言葉が、30年間胸の奥に閉じ込められていた本音でした。この言葉が出た瞬間、患者の中で何かが変わったのだと思われます。
— 第10回 特記事項よりPCRTの認知調整法では「反応言語」が検出されますが、ここで出てきた「復讐心(姉・義兄)」は、単なる怒りではありません。「両親を守りたかったのに守れなかった悲しみ」「家族に優しくあってほしかった願い」が裏返しになった感情です。その複層的な感情に患者自身がたどり着けた瞬間が、転換点でした。
「腰椎すべり症」という意味付けが示すもの
第10回に患者が持ち出した「腰椎すべり症が原因ではないか」という発言は、PCRT臨床において非常に重要なシグナルです。
この視点はPCRT全般に通じる重要な臨床ポイントです。慢性痛患者の多くが、何らかの器質的診断ラベルを持って来院します。そのラベルへの患者の信念の強さが、PCRTの効果に影響を与えることがあります。信念の書き換えは、単なる「説明」ではなく、患者自身の体感を通じた「再学習」によってのみ達成されます。
「姉に会いたいが会いたくない」——心の混線の臨床的意義
第10・11回を通して繰り返し出てくるのが「姉夫婦のところへ行ってみようかな」「しかし本当に行けるのか」という葛藤です。これは単純な「行きたいか行きたくないか」の問題ではありません。
PCRTで言う「心の混線」とは、複数の相反する情動が同時に活性化し、神経系が矛盾した信号を出力する状態です。この症例では:
- 「家族は良い関係性でありたい(団結心)」← 会いたい
- 「義兄の言動が許せない(復讐心)」← 行きたくない
- 「足を運ばない自分を省みている(自省心)」← 自責
- 「両親への謝罪・感謝を姉を通して伝えたい(本音)」← 言葉にできない
これらが同時に活性化していたことが、身体の誤作動信号の「持続発火」を引き起こしていたと考えられます。第11回の「施術中にスーッと痛みが引いた」という体験は、この混線が解消された瞬間の身体感覚として非常に理解しやすい表現です。
フィードバック(深化のための観点)
第3回「傾聴に専念」の判断を考察で明示化すると良い
「初回と同じキーワードの再出現」が示す意味を考察で掘り下げると良い
「夫を見舞いに行けない安心」の葛藤をより深く展開できると良い
施術環境の整備についての提言は実践的に価値が高い
「腰が治った」というよりも——30年間、心の奥に閉じ込めていた「ただただ両親に優しく接してほしかった」という一言を、ようやく口にできた瞬間に、身体が変わった。これがこの症例の本質です。
9回の停滞は無駄ではありませんでした。ラポールを築き、自己認知の下地を積み上げ、患者が安全に内面の核心に触れられる準備を整えた時間でした。倉持先生の粘り強い対話と傾聴の姿勢が、この転換点を生み出したことを改めて讃えたいと思います。
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